豊かな緑を享受する住宅街に立つ五角形の住まい
札幌市内の中心部でマンション暮らしをしていたKさんご一家。都心のマンションは便利だけれど窮屈で、「一軒家で子どもをのびのび育てたい」「スタジオを借りて夫婦で営んでいるヨガ教室を、将来的に自宅でできるようにしたい」という2つの理由から、家づくりを考えるようになりました。
自然を身近に感じられる場所を検討し、見つけたのは建築条件付きの土地。しかし「担当営業との意思疎通が難しく、違和感が募っていきました」と打ち合わせは難航。そんなKさんご夫妻は、雰囲気が好みでよく利用していたというカフェ「35stock」を運営するのが三五工務店だと知り、同社のモデルハウスに通っていたといいます。「設計士の蝶野さんから家のコンセプトやこだわりを聞くのが楽しかったです」と奥さん。平行線のまま進んでいく自分たちの家づくりと、暮らしに寄り添いつつ細かなディテールにも徹底する三五工務店の家。後悔のない家づくりがしたいと考えたKさんご夫妻は、検討していた土地を諦めて三五工務店との家づくりを決断しました。
同社の協力を得ながら見つけたのは、住宅街の角地に位置する五角形の変形敷地で、川沿いに続く公園や山々の緑に囲まれた好立地。2023年5月に完成した新居は、南西に広がる緑を捉えるために斜めに角度をつけた敷地同様の五角形の住まいです。1階にヨガスタジオ、2階にLDKを配して公私を分離。薪ストーブが鎮座する仕切りのないLDKは無垢床や現し天井の木質感と白の内壁が調和する上質な空間で、「夏になると窓の向こうに緑が広がり、自宅にいながら避暑地に来たような感覚を満喫できます」と笑顔の奥さん。「四季折々の変化を楽しみながら過ごす日々は充実そのもの。完成から半年以上経ちますが、日一日と家への愛情が募っています」。
owner's request
「自然に囲まれた土地」
山を背負い、前面に緑豊かな公園が広がる敷地。新緑や紅葉、枝に積もる雪など、四季折々の美しい景色が暮らしをより豊かにしてくれる。
「家族でくつろげる場所がほしい」
リビング横に設けた小上がり和室はソファを持たないKさんご一家にとってのベンチ代わりにも。子どものおもちゃや、来客用の布団などを収納できる小上がりの下の空間を生かした大容量の収納も便利。
「つながりのある空間」
左手奥の子ども部屋ともつながるキッチン。「オープンなキッチンは作業をしながら家族の様子や薪ストーブの炎を眺めることができるので快適です」と奥さん。
玄関を見下ろす適度なサイズの吹き抜け。
「プライベートを確保しながらも、上下階を程よい距離感でつなぐように意識しました」と設計担当の蝶野さん。
「ヨガスタジオをつくりたい」
Kさんご夫妻が営むのはホットヨガスタジオ。室温は常に40℃程度をキープするため、床下に温水床暖房を採用し、結露のリスクを避けるために壁はクロスではなく針葉樹合板を張った。ログハウスのようなイメージにならないように、針葉樹合板は白く塗装している。
ヨガスタジオの利用者も使用することを想定した広い玄関は、大容量のシューズクロークも設置。
point
炎のある暮らしを希望して導入した薪ストーブは、大きな窓面が特徴のスペインのブランド「ヘルゴン」。炉壁や窓辺には札幌軟石を採用している。
1階寝室の窓は、外の緑や空を感じつつ、落ち着きを感じられるよう計画されている。
収納を兼ねた壁でゆるやかにゾーニングされた容量たっぷりのウォークインクローゼット。階段から先はプライベート空間。数段上った先に寝室への入り口を設け、寝室はあえて床レベルを下げてじゅうたんにすることにより、ぐっと安らげる空間に。
設計担当者(写真中央)より
南西に広がる緑を見せるために計画したこの角度は、実は敷地の角度とは若干異なっていて、外観のフォルムの美しさを考えながら微調整をして決めたものです。雑多な情報を取り込まず、緑や空だけを捉える窓計画も徹底し、住宅街でありながらも自然を享受する豊かなLDKを実現しました。ヨガスタジオを備えたこの家は、プライベートゾーンとパブリックゾーンの振り分けが要。1階の寝室は、玄関ホールからの出入りを避けて階段を数段上った先に扉を設置することで、プライベートにパブリックを持ち込まないようにしています。ヨガスタジオを見学したり、旧居を訪問して私物の量や好みのテイストを把握させていただくなど、Kさんご夫妻はとても協力的で、設計者としても非常に楽しい家づくりでした。
Replan別冊「北海道の工務店と建てる。2024年版」より