三五工務店×大雪木工 対談企画②
三五工務店×大雪木工 対談企画②
北海道の木は、いかにしてmorinosへと生まれ変わったのか。
三五工務店が送り出したオリジナルの椅子「morinos」。
その製造を担ってくださるのは、東川町にある家具メーカー大雪木工さんです。
北海道で育った木々が、どのような想いや考え、技術を経て、椅子へと姿を変えていったのか。
企画・デザインを担った三五工務店の関根と、
大雪木工で製造管理を担当された藤田さんが、この一脚の生まれた背景を語り合いました。
その時の様子を3回にわけてお届けします。
第2回 試行錯誤の軌跡。
関根
見た目としてのデザインについてはどう感じましたか?
藤田
モチーフにされている枝葉は、木を扱う私たちにとって非常に馴染み深いものです。
森の雰囲気が家の中に入り込んでくるというのは、すごく共感できます。いいですよね。
当社にも枝がついたようなデザインの家具があったんですが、不満があってリニューアルを考えていたんですよ。
だから、morinosは「こういうやり方、いいよね」と共感できるデザインでしたね。
関根
デザインのプロセスは、まず手書きで描いてから3Dモデリングをしていきました。
そこから大雪木工さんにサンプルを作っていただいたんですが、いざ形になると画面上との違いが結構あって…。
見た目以上に、特に気になったのが座り心地の悪さ。
もちろん計算上は良いサイズ感にしているのですが、やっぱり正解は実際に座ってみて心地よいかどうか。
一発OKとは思っていなかったですが、結局試作を3回行って、やっと商品が完成しましたね。
藤田
私たちとしてのハードルは、この細い部材でどう強度を出すかということ。
実は肘付きの椅子を手掛けるのは初めてだったんです。突破できたポイントはホゾ加工。
椅子の強度を出すには良い加工なんですが、うちにはその機械がなかったんですよ…。
なので、手持ちの機械を改良して対応しました。 テーブルであるmorinoteも同様ですね。
関根
morinosだけでなくmorinoteもデザインモチーフは木の枝です。
椅子とあわせて、ダイニングセットとして置いた際に、テーブルの足が枝分かれしている様子と、
4脚並んだ椅子の肘から枝分かれしている様子は、森をイメージしてデザインしました。
この枝のデザインは、強度を高めることにも貢献しています。
肘の葉っぱの形は何回も迷いましたね。
最初はシンプルにペタンとさせていたんですが、思い切って枝と葉の柔らかさをデザインに持たせてみたら、
想像以上に良くなったと思います。
構造については、大雪木工さんに調整してもらいましたね。
藤田
はい、構成するパーツ点数を絞るために、シンメトリーにすることを提案させてもらいましたね。
関根
結果として、この形になって良かったなぁと思っています。
あとは使い心地ですが、ダイニングの椅子って、使うたびに後ろへ引く作業が必要ですよね。
だから重い椅子って使いづらいなと。軽くしたいっていう思いは当初からありました。
実際、家具メーカーさんとして、お客さまのニーズを間近で見ていると、そのあたりってどうです?
藤田
ふれてみて、すごく軽い家具だと喜ばれますね。
ゆったり座れる面積を取ると、それにあわせてどうしてもフレームなども太くなっていきがちですが、
morinosはちょうどいいバランスだと思います。
関根
大雪木工さんで作られている椅子の中でも、軽いほうですか?
藤田
そうですね。
素材として選んだナラは、しっかりとつまった木。重くなりがちな木ですね。
でも最小限のパーツで構成していることもあって、安定感はありつつも、軽く仕上がっています。
関根
背もたれも軽さの要因になったかなと思いますね。
薄い板で作ってもらっていますし。
藤田
見た目の軽さも出ましたよね。
見た目といえば、色展開についての狙いを聞いていいですか?
関根
まず木材の色についてですが、最初に設定したのがナチュラルな雰囲気にあうクリア塗装。
木そのものの色を表現しています。対して、極端なものとして黒っぽい色も用意しました。
ウォールナットやブラウン系の色ですね。その上で、中間に一つ色を設定しています。
つまり、「明るい」「暗い」「もっと暗い」みたいなラインナップです。
藤田
なるほど。そのような色の設定した理由は?
関根
藤田さんは百も承知だと思うのですが、材料となる木にも良し悪しがありますよね。
黒っぽい木だと、どうしてもナチュラル系の塗装には使えません。
あとは節や黒ずみがあって使えないとされてしまう木もあります。
それに対して、暗めの塗装色をラインナップに持っておくことで、木材を無駄なく使えます。
だから3つのタイプの色を設定しました。
また、家の床の色味って様々あって、暮らしのシーンもお客さまの数だけあるので、
そこにも対応できるようにしています。
藤田
ファブリックの色はどうですか?
関根
最初に決めたのは、多くの色のラインナップを持つのは避けようということです。
立ち上がり時には、私たちが自信を持って提案したい色だけを打ち出そうと。
スタンダードなグレー系と、ポップな色が好みの方のために明るめの黄色をラインナップしました。
今後の話ですが、当社にインテリアコーディネーターの専門部署が生まれたら、
張り地はもっとバリエーション増やせるかもしれないですね。
藤田
ファブリックだけじゃなく、革もラインナップされているのは特徴的ですよね。
関根
実はもともと合皮で検討していました。ファブリックと変わらない価格で出せますから。
しかし、社長から「実際にやるなら、本物でいこうよ」という意見が出て、本革を選んだんです。
レッド系の茶色とイエロー系の茶色を設定しています。
藤田
やっぱりいいですよね。革には、革の良さが出ていて。
関根
そうなんです。ただ、これは大雪木工さんにもかなり協力いただいているんですよね。
一頭の牛からとれる革の量って決まっていて、そこから椅子の座面のサイズを切り取っていきます。
まず1枚大きな革を大雪木工さんに仕入れてもらう必要がある。
つまり在庫を抱えることになるわけで…。
藤田
革はいいよねと思いつつ、在庫リスクを回避する意味では合皮が良かったなぁというところはあります(笑)。
ただ、長くずっと使っていける家具をめざすのであれば、やっぱり革ですよね。
だんだん味が出てくるところは捨てがたいです。一緒に年をとっていく感覚がしますから。