35ストーリー 35STORY

家語

家語(いえがたり)STORY1

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家語 STORY1

物林株式会社 住環境システム部 北海道営業室 室長代理  阿部 省さん

家づくりは、工務店だけでは成し得ません。

それぞれの視点とスキルをもった、多彩なプロフェッショナルの協力が必要不可欠です。
わたしたちは、理想のお住まいを皆さまへご提供できるよう、日々語りあっています。
住まい手にとって、北海道にとって、最高のストーリーを紡ぎだせるよう、互いの想いをぶつけあっています。
その語りの中身をぜひ聞いてみてください。
家づくりやライフスタイルのヒントがきっと見つかるはずです。

——  田中
阿部さん、今日はありがとうございます。この山にご一緒させてもらうのは3年ぶりですね。
——  阿部
そうですね。この似湾山林は、三井物産(株)の社有林で、わたしたち物林(株)の取引会社である三井物産フォレスト(株)が管理をしており、苫小牧の東に位置する厚真町とむかわ町にまたがっています。広さは4,750haで、札幌ドームのグラウンド(1.446ha)3,000個分以上ですね。
——  田中
広大ですよね。山道がかなりワイルドで、今回、自分の運転で入ってきたことを少し後悔するほどでした(笑)
——  阿部
木材を積んだトラックがこの道を通るんです。
すごい仕事ですよ。
——  田中
木そしてこのカラマツ、とても立派に育っていますね。
——  阿部
この辺りのカラマツは、もうすぐ50年を迎え、木材用に伐採されます。
行き先は、半数程度が道外。地元の人が、地元の木材にもう少し目を向けてくれたらと思うのですが。
——  田中
まさに、その話がこの対談シリーズの基礎になると思い、第1回を阿部さんにお願いしたんです。弊社の道産材の使用比率も、以前はわずか1、2割で、阿部さんとお会いするたびに道産材の話をしていただきましたね。そんなある日、「条件面でなんとかなれば、もっと使えるように社内を説得できるかもしれない」と伝えたところ、「なんとかします」と言ってくださって。
——  阿部
はい、失敗しました(笑)
——  田中
(笑)それで3年前にここへ連れてきてもらったわけです。木を育てて、切り倒し、トラックで運んで、工場で製材する。物林さんの一連のお仕事をこの目で見たいと思って。
——  阿部
我々の強みは、俗に言う「川上(山)から川下(現場)」まで一貫して携われることです。今日見たような山から取れた丸太を、関連会社のオホーツクウッドピア(留辺蘂)で集成材にし、北海道プレカットセンター(苫小牧)でプレカット材にして、大工さんの手にお届けしています。あの日はすべての流れを見ることができましたね。
——  田中
1本の木がたどるストーリーを頭ではわかっていたものの、実際に見ることで、道産材が高品質である理由を再確認できたのは大きかったです。あれ以来、弊社の社員にも、お客さまにも、胸を張って「道産材を使いましょう」と言えるようになりました。
——  阿部
森まで行こうとする建築関係者はまずいません。まさか来てくれるとは思いませんでしたが、共鳴していただけたのはうれしかったですよ。
——  田中
地場の工務店が道産材を使うことで、地域の雇用創出や、森の健全な育成にもつながり、長い目で見れば北海道で暮らす建て主さまにも還元されていくはずです。そんな想いを込め、阿部さんをはじめ多くの方々にご協力をいただいてスタートしたのが弊社の「カラマツ宣言」です。カラマツなどの道産材を積極的に用いることで、建て主さまとともに地域の豊かさに少しでも貢献できればと願っています。現在、構造材には道産カラマツを100%使用するまでになりました。
——  阿部
当然ながら、三五さんだけに道産材をお勧めしているわけではありませんが、ここまで徹底してお使いいただいている会社はまだまだ少ない。すごいことだと思います。ところで田中さん、8年前の話をしてもいいですか? 東京で飲食関係の仕事をしていた三五さんの3代目が帰ってきたときのこと。初めてお会いしたその人は、現場の足場で懸垂をしていたんですよ。不思議な人だなと(笑)。
——  田中
すみません、当時はまったく先の事を考えていなくて(笑)。大学で建築を学びましたが、料理の道に進みたかったんです。自分の店を持ちたいと思って東京で働いているなか、父から「自分を育ててもらった仕事を一度もやらないでいいのか。1年やって、それでも嫌だったらやめろ」と諭されまして。帰ってきてからたくさんの協力会社の方とお会いしましたが、阿部さんもかなり不思議な営業さんですよ。モノを売らないんですから(笑)
——  阿部
その言い方は問題があるでしょう(笑)
——  田中
モノよりも価値を売っているというか。見ている世界が広くて、会社の枠を超えて関係者を集めた会も開いてくれていますよね。阿部さん以外の人は「阿部会」と呼んでいますが(笑)、そこでの話はとても勉強になっています。そうして徐々に建築がおもしろくなって、今では心から仕事を楽しんでいますよ。
——  阿部
田中さんは本当に好奇心が旺盛ですよね。そして何かを感じれば、すぐに行動を起こす。山に来てみたりね。
——  田中
コックをやっていたので、生産者の畑を見に行くような感覚だったかもしれないですね。でもたしかに、とにかくやってみるタイプではあります。「カラマツ宣言」も最初は社内で反対されました。それでもへこたれなかったのは、これが木の国・日本のあるべき姿だと思ったからです。今は輸入材の使用量が圧倒的ですが、もともとはみんな国産材を使っていた。これを元に戻すことがわれわれの使命だとも思っています。ちょっと偉そうですかね(笑)
——  阿部
いえいえ、私も同感です。近年、役場などの公共建築でも道産材を使うことが推奨されています。なかでも、強度のあるカラマツが構造材に使われることが多いですね。
——  田中
構造材なしで建物は建ちませんから、それにこだわるのは本来とても大切なこと。でも、見えない部分にこだわるのは、建て主さんにとって難しいことでもあるんですよね。
——  阿部
見える部分に予算を割きたくなる気持ちはわかります。三五さんではその辺りを工夫されていて、天井などの構造材をあえて見せるデザインも取り入れていますね。
——  田中
この先もいろいろ工夫をして、どんどん使っていきたいです。生まれ育った場所で使われる木材は、その地域の気候風土にいちばん合っているはずなので。料理人が食材にこだわるように、道産材にこだわるつくり手がもっと増えたらうれしいです。使わないと、森が死んでしまいますから。
——  阿部
そうですね。人の手が入らず自然の状態に戻ると、太い径の良質な木が採れなくなってしまいます。一度途切れれば、復活させるまで膨大な時間がかかってしまう。このカラマツだって、50年近く前に植えられたものなんですから。おじいちゃんが植えて、2、3代後にようやく伐採できるわけです。
——  田中
ぼくも3代目ですので、なにか不思議な縁を感じます。こうして日本や北海道が長い年月をかけて培ってきたものを活かしながら、ただ家を建てるだけではなく、一歩先の住まい方までを提案していきたいと思っています。
——  阿部
建材を売るのがわたしの仕事ですが、三五さんとのお仕事では、家づくりのその先が見えるような気がしています。だから一緒に働いていて本当におもしろいですよ。
——  田中
今後ともよろしくお願いします。今日はありがとうございました。

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