【第4回 築7年】
ライフスタイルの変化とともに育つ、多様な「抜け」でつながる家
今回は2015年に完成したHさん宅にお邪魔しました。ご夫妻、小学生の男の子、就学前の女の子という4人家族のお住まいです。Hさん宅の建築には自分自身もかなり深く関わりましたので、思い入れが強いですね。当時の弊社は、住宅の性能面では十分すぎるほどのスペックを提供できるレベルに達していました。それに加えて弊社ならではの新たなデザイン性を確立したいという時期で、この両輪をまとめ上げるというテーマを持って挑みました。
まず意識したのは、空間の「抜け感」です。玄関から建物奥まで廊下がまっすぐ伸び、奥まで進むと吹き抜けのリビング・ダイニングがあります。その2つのスペースを壁で仕切らず、フロアの段差で独立した空間にしたのがポイント。2階にあるバスルームもガラスの間仕切りで開放的にしています。このように多様な「抜け」をつくることで、どこに誰がいても、お互いが声や姿を感じながら暮らしてほしいと考えました。奥さんにお話を聞くと「洗濯機も2階なので、2階で洗濯物を干すときに1階にいる子どもたちが見えるという楽しさや安心感があります。ガラス窓のお風呂も同じように気に入っています」と、嬉しいお言葉をいただきました。
そしてもう1点、このお住まいから弊社の現在のデザイン性につながる素材使いが始まりました。木、石、アイアンを主役にしながら、モノトーンにプラスアルファの色調を入れるというスタイルです。長い廊下は石張りとし、階段の手すりはアイアン、柱や梁は道産カラマツの現しで仕上げています。道産カラマツは以前から積極的に使っていましたが、この時期から下川町のタモ材なども使いはじめており、こちらのLDKの床にもタモの無垢材を敷いています。
時を経ても古びることなく、変化する美しさを末長く楽しめるのが自然素材の魅力。そして、それを存分に引き出すデザインこそ、現在の三五工務店の家づくりの大きな特徴だと言えます。「ゆっくりした変化なので、普段気づくことはありませんが、入居した当初を思い返せば、確かに味わいが増しています。これからどのように変化していくのか、とても楽しみですね」。
そして素材の表情だけではなく、たとえばダイニング側の吹き抜けはお子さんが大きくなったら子ども部屋にすることを想定して設計しました。このように、ご家族のライフスタイルの変化とともに育っていける家づくりを、これからも模索していきたいと思います。Hさん、また数年後、成長したお住まいを拝見させてください。
|| 完成当時(7年前)の様子
Report by Replan